17本の細い竹管から成る。竹管は同じ太さだが、長さは異なり、音高も異なる。各管の下部に金属製のリードが付いている。このリードが振動すると、リードから竹管の上部の閉管部分までの空気が振動する。竹管には指孔がついており、音とを出すためには、この孔を塞ぐ必要がある
したがって、孔が開いたままの管は無音である。17本の管は吹き口がついた木製の部分に円筒状に固定される(図 1, 2) 。
図 1
笙吹き口
図 2
笙は、リードが湿っていると音が出ないので、リードが付いている部分を解くおり乾燥させなければならない。そのために、演奏者はいつもかたわらに電気ヒーターを置いている(図 3)。
図 3
この楽器は、息を吹き込んでも、吸い込んでも、音をだすことができる。
笙はA-430Hzに調律される。楽譜に書かれているより実音は1オクターブ高い。
17 本のうち、15本だけが音を出す。図4は、笙の15の音高を示す。図5は音高と指遣いの関係。
図 4
指遣いには基本がある。複数の管を受け持つ指は、それらの音を同時には出せず、一回に一音しか出せない。たとえば、A4とD5(楽譜ではA3とD4)は同時に出せない。というのも、これらの音は左手薬指が担当するからである。例外は、右手の食指で、E5とF#5(楽譜ではE4とE#4)を同時に鳴らすことができる
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Figure 6は笙の4つの音(A4, E5, A6, E6 : 楽譜ではA3, E4, A4, E5)のスペクトラムである。基本的に音の全域をカバーしていて、笙の二つの特徴を示している。第一に、すべての音域において、スペクトラムの分布はほとんど変わらない。これは、全域にわたって、音色が均一であることを示唆している。これは、一般的には低音域が暗く、高音域が明るい木管楽器の音質からすると、珍しい。笙の最低音(A4,楽譜でA3)と最後から二番目の音(E6, 楽譜ではE5)を聴き比べても、笙の全般的な均一性がわかる
第二に、図 5は全域にわたり、音の第二倍音、第四倍音にエネルギーを保ち続けていることがかわかる。これは部分的には、笙の一音ごとの明るく澄んだ音質の理由となる。
アーティキュレーション:伝統的に日本の楽器ではタンギングは使われず、息づかいによってフレーズは形成される。
笙の音域は限られており、各管の音量はどちらかというと小さい。したがって、笙の役目は、合奏において、「合竹」と呼ばれる和音を演奏することである。6音まで使うこの和音は、ひじょうに印象的である。図 6は、実際の楽曲で使われる11種類の和音である。「十」と「比」を除いて、和音の最低音は和音の基本音と認識されている(楽譜では黒い音符で示す)。
図 6
一つの合竹から次の合竹への移動は、「手移」と呼ばれる指の微妙で段階的な移動によって行われる。合竹は十分に和音なのだが、熟練した笙演奏家は、ある和音から次の和音へ、どのように旋律的、リズム的な変化するかをよく知っている。この変化は、旋律的であり、リズム的に設定されているが、きわめて印象的である。次の例は、「行」→「一」→「行」の手移である(例 1)。
例 1
例 2は「越殿楽」のBとCセクションの基本旋律とリズムである。これは、笙が旋律を彩るためにいかに多様な合竹を使用しているかを示す。リズム類型は早四拍子(4小節で1リズムパターン、1小節は4拍)で、1セクションは2フレーズから成っている。調子は平調(ドリア、羽調)で、E, B, Aの三つの音高が頻出する。これは、日本の旋法体系の中の4つの基本音のうちの3つである。(詳しくは「理論/音高」の項参照)
例 2は、ある合竹から次の合竹への変化を示す。笙の合竹の最低音は、旋律線とされている。したがって、Example 2は、大部分において、笙の和音変化が旋律に沿って「リズム的」であることを示している。ただし、第14小節の第三拍は、必ずしもそうではないことを示す。ここでは、旋律がAなのに、合竹は「乞」=Aではなく、「一」=Bを用いている。ここでは、「一」=Bは、「工」=C#から、太鼓の拍に来る「乞」=Aの間の、経過的な和音と考えることができる。(詳しくは「理論/音高」の項参照)
演奏は伶楽舎。
例 2
例 3
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呼気の時のフラッター(強) |
吸気の時のフラッター(強) |
呼気の時のフラッター(弱) |
吸気の時のフラッター(弱) |
例 4 |
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フラッターと和音 |
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例5 |
メキシコ人作曲家のフリオ・エストラーダJulio Etrada(1943生)は石川高と協力して、オペラPedro Páramo: Doloritas (2006年) の中で新しい技法を行った。その中には、息づかいの他に、声の使用、さまざまな強さやビブラートで吹く技法などが含まれている。
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演奏しながら低い音で歌う |
しながら高い音で歌う |
例 6A |
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演奏しながら歌う |
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例 6B |
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息の強さの違い |
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例 7A |
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息の強さの連続的変化 |
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例 7B |
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例 8A - 区切って変化する場合 |
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例 8B -連続して変化する場合 |
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ビブラートのさまざまな速度変化 |
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乙の気替(きがえ) |
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例 9A |
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ホワイトノイズ |
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例 9B |
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カラードノイズ |
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例 9C |