7孔の竹製の横笛。約40センチ。竹の内側はくりぬかれ漆がぬられている。外側は紐状にした樺が巻かれている。はじめの3つの孔は左手の指で、あとの4つは右手の指に当てられる。吹口は西洋のフルートと似ており、約1.3cmの直径である。
図 1
図 2
龍笛は、下記の譜よりも1オクターヴ高い。A-430Hzである。
図3は龍笛の音域でC#4 tからF#6である。全音で示されている音は、7つの指孔の開閉で生じる音、四分音符で示されているのは、指の半分だけの開閉や息づかいで作り出す音である。
図 3
C#5 と D#5(譜の C#4 と D#4))は音を出す事はできるが、実際の楽曲では使われない。というのも、音色が貧弱だからである。図4は、龍笛のD#5 と E5 (それぞれ D#4 と E4書かれている)を比べたものである。赤で示されているE5のスペクトラのほうが9つの突出した部分があり、5つしかピークがない青のD#5よりも豊かである。さらに、E5の一番高いピークは、この音がD#5よりも強いことを示している。結果として、E5(譜ではE4)は龍笛の最低音と認識されている。
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龍笛のスペクトラ D#5(青)とE5(赤)ff で吹いた場合
図 4
龍笛にはオクターヴ・キーがない。したがって、演奏者は指遣いと息を強く吹き込むことによって2オクターヴ、3オクターヴを出す。図5は、強い息が音色に及ぼす影響を示す。図5は、上から下へ、E5, E6, E7 (譜では E4, E5, E6)をそれぞれ表す。これらはすべて同じ指遣いである。上段から中段の矢印は、強く吹くと、青で示されたE5から赤で示された(1オクターヴ上の)E6への移行において、E5の音高がE6においても残っていることを示す
龍笛のセメ音域の最初の音であるE6(赤)のスペクトラは、この音域が高い周波数帯が豊かで、2、3、4の浮いた部分が示す通り、軽いことを示している。
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龍笛のスペクトラ E5(青)、E6(赤)、E7(緑)をff で吹いた場合
図 5
龍笛のE7(緑色)を示す下段のスペクトラの赤と黒の矢印は、龍笛に高音域の最初の音であるE7の音においても、E5、E6の音が残っていることを示す。この、蓄積される音によって、高音域が不安定になる。換言するとE5、E6の音を打ち消し、E7の音を出すためには、より強い息が必要になるのである。
押す | 当てる |
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例 1
折る手 |
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例 2
懸吹 D6-E6 | 懸吹 G5-D6 |
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例 3a
懸吹 E6-G6 | 懸吹 B6-B6 |
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例 3b
叩く | 動く |
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例 4
まわす |
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例 5
例6は、越殿楽のBとC部分の基本旋律である。この譜は、龍笛がいかに様々なパターンを使い、旋律に彩りを添えているかを示すためのものである。拍節は、早四拍子(1小節4拍、4小節で1リズムパターン)で、1部分は2フレーズから成る。音階は平調で、旋律はE, B, Aに集中しているが、これは日本の旋法大系の4つの基本音のうちの三つである。
例6に示されるように、龍笛は持続音に彩りつけるために、または連続する二つの旋律をつなぐために、さまざまなパターンを使う。そうすることによって、基本旋律にリズム的な性質を付加する。基本旋律を重ねる場合、ほとんど乱れることはないが、13小節目の旋律音B - C#は、他の楽器では重なるが、龍笛はC# - Dである。この不一致によって作られる緊張が、前の小節の終止形から、つぎの第15、16小節への「移行」を後押しするのではないかと推測する。
演奏は伶楽舎である。
例 6
ハーモニクス |
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例 7
カル と メル |
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例 8