オーケストレーション(続き)

絃楽器の混合

笙の機能は和音を提供することにある。二つの絃楽器は協力して、絃楽器のパタンを創り、旋律に関係のある音程を持つ旋律型と和音によって、音程を持たない打楽器的なアタックを装飾することによって、管楽器と絃楽器の橋渡しをする。

絃楽器のパートには、固有の内部の階級がある。琵琶そこでは小節ごとに一拍目のダウンビート(下方向にバチを掻き下ろす)のアルペジオで装飾する機能を持つ。小節ごとのダウンビートに打つという役割を持つ鉦鼓ともまた関連している。一方、箏のパタンは通常2小節にわたっていて、琵琶の和音をすこしずつ弾いて行きながら、主旋律の音を補強する。 この点において、箏は篳篥、龍笛と関連している。 例1は、そのプロセスを示している。篳篥と龍笛は旋律の音として第1小節でDを吹き出す(矢印の部分)。この音は、笙と琵琶の同じ拍によって補強される。 伝統的に笙の最低音と琵琶の最高音は旋律の主要な音であることは注意すべきである。琵琶のEとDの音は箏のパートで繰り返されるが、分散和音の最低音であり最高音であるDが強調される(矢印で示した部分)。録音例は作品の冒頭のところである。箏は第3小節から入る。この例は伶楽舎の録音からである。

〈越天楽〉セクションA(第9-12小節)の第1フレーズ(簡略化
例 1

琵琶と箏は、その機能において同一であるが、その音は決して混ざり合わない。事実、二つの絃楽器は通常、異なる層を作っており、それぞれの音ははっきり区別して聞こえる。融合を阻む二つの要因がある。第一に、二つの音の融合には最低の共鳴(時間)が必要だが、琵琶は1秒以上響きが続かない。第二に、リズム的に楽器が同時に重ならないない場合、異なる部分を聞き取る我々の能力は増す。このことは琵琶と箏に当てはまる。琵琶は各小節のダウンビート(強拍)に当るが、箏のリズムは、閑掻の場合、最初の小節の第2、3拍、早掻の場合は同じ小節の中の第1、2、3拍を強調する。

管絃の美

絃楽器のパタンは、この音楽の全体的な音色構造に、また別のレベルの変化を加える。旋律の前半は管楽器が活躍し、後半で管楽器が休む点に来ると、リズム的に特徴がある絃楽器に移行する。例2はセクションAの最初のフレーズを示している。

〈越天楽〉セクションA(第49-52小節)の第1フレーズ(簡略化絃楽器、管楽器のみ

例 2